セミリタイアに向けた資金計算は、どれだけ信頼できるのか
セミリタイアを考えるとき、まず一番に心配するのがお金のことですよね。
ぼくも心配します。
そして、そういった不安に答えるような記事もたくさんあります。
ファイナンシャルプランナーの肩書きを持った人たちが、将来にわたる家計を計算してくれて、「いまのままで大丈夫ですよ」とか「あと2〜3年は頑張って働きましょう」とか「保険を解約して交際費も節約しましょう」とか、いろいろアドバイスしてくれるわけです。
みんなそれを読んで、「あとちょっと貯金しなきゃな」とか「もうそろそろリタイアしてもいいかな」とか思うんでしょうね。
ぼくも読んでます。
でもね。
あれって、どれだけ信頼できるんでしょうかね。
たとえば、こんな記事が出ています。
それには、こう書かれているんですよね。
たとえば現在30歳で毎月20万円で生活している人を考えてみましょう。
(90歳まで生きることを前提)
・年間支出額:20万円×12ヶ月 = 240万円
・総支出額:(90歳ー30歳)×240万円 = 1億4,400万円
30歳から90歳まで月20万円で生活していても、総額1億4,400万円の資金が必要です。
30歳から90歳までかかる資金を計算しています。
それで、「1億4400万円の資金が必要です」と断言してる。
これ、ウソです。
だって、60年後のことなんて今から計算できるわけないじゃないですか。
逆に60年前のことを考えてみれば分かります。
その時代に生きていて、今の状況を想像できるのかどうか。
60年前は1959年です。
1959年の主な出来事を見てみましょう。
1月1日にキューバ革命が起きました。
1月3日にアラスカがアメリカの49番目の州となります。
ちなみにハワイは50番目の州で、このときはまだアメリカじゃなかったんですね。
ハワイは8月に加盟し、ようやくアメリカが現在の形になります。
1月10日にNHK教育テレビの放送が始まります。
3月にフジテレビが放送を開始、週刊少年マガジン、週刊少年サンデーが創刊。
4月に巨人の王選手が第1号ホームラン。
6月にシンガポールが独立。
次の1960年は「アフリカの年」と言われ、アフリカ大陸で17カ国が植民地からの独立を達成します。
1961年に人類初の有人宇宙飛行があり、さらにベルリンの壁が作られます。
とまあ、こんな感じの時代でした。
60年前はアフリカの国々はまだ植民地で、世界にはソ連が君臨。
冷戦の真っただ中でした。
ベルリンの壁が作られる前で、東ドイツという国があり、当然EUもありませんでした。
現在のグローバリゼーションや米中の覇権争いは想像もできなかったでしょう。
当然ながら携帯電話もインターネットもなく、フェイスブックもアマゾンもツイッターもない時代です。
経済を見てみると、円相場は1ドル=360円の固定相場でした。
たばこが30円、新聞の購読料は月390円。
国鉄(現JR)の初乗りは10円。
そして、大卒の初任給が1万1297円。
60年前のファイナンシャルプランナーは(もしそんな人がいたとしたら)、こんな風に計算して、こういう記事を書いたでしょうね。
「1ヶ月に1万円あれば暮らしていけるので、年間15万円あれば大丈夫。年金は55歳から受け取れるので、300万円あれば35歳でリタイアしても心配いりません」
さて、60年後の現実をみたら、年間15万円どころか月に15万円でも生活するのがやっとです。
完全に机上の空論だったということがわかりますよね。
だから、60年後の生活費を月20万円と計算している時点で、「30代でアーリーリタイアできる資金額は?」なんていう記事に意味はないんです。
じゃあ、セミリタイアをめざしている人は、どうやって将来の計画を立てたらいいんでしょう。
ごめんね。
ぼくにもわかりません。
というか、世界中の誰にも60年後のことなんか分かりっこありません。
できるのは、いま最善だと思う決断をして、後悔しないように実行することくらいです。
あとは、なるようになれ。
ケ・セラ・セラ。
そんな感じ。