田中泰延「読みたいことを、書けばいい。」は、読んでも読まなくてもいい本だった
むかし、職業はわかりやすかったものです。
大工さんとか花屋さんとか八百屋さんとか。
何をやっているのか、すぐわかった。
いまは大変です。
インダストリアルデザイナーだとか、インテリアコーディネーターとか、カスタマエンジニアとかゲームクリエイターとか。
ぼくが目指しているのはスーパーエキセントリックセミリタイアプランナーアナリストですけどね。
肩書きも変わりました。
かつては社長がいて、専務がいて、あとは部長と課長と係長くらいでしたよね。
今はCEOにCOO、CFOにCMO、CTOなど英語がいっぱい。
カタカナにしてもエグゼクティブオフィサーだとか、アシスタントマネージャーだとか、ファイナンシャルディレクターとか、誰がどれくらい偉いのかわからない。
ぼくができるとしたらせいぜいUFOアドバイザーくらいでしょうね。
最近は「個人のブランドを高めないといけない」みたいな風潮も蔓延しています。
ホリエモンや田端信太郎、箕輪厚介あたりのイケイケの人たちがガンガン煽って本を売りまくっています。
実際、いろんな人たちが自分をブランド化して出てきています。
セミリタイア界隈に親近感があるものとしては、「プロ無職」とか「プロ奢ラレヤー」なんてひとたちがいますね。
「レンタルなんもしない人」も最近はメディアで取り上げられています。
世の中、考えついたもの勝ちですね。
みなさんも「プロリタイアラー」あたりを名乗って売り出せばいいかも。
そうした中から出てきたのが「青年失業家」を打ち出す田中泰延氏です。
ようやく本題にたどり着きました。
相変わらず前置きが長い。
田中氏はネットやSNSでちょくちょく出てくる業界人。
電通でコピーライターやCMプランナーを長くやって独立した人で、糸井重里や燃え殻とも親交が深いようですね。
この本は初めての著書ということですが、ネットで知られていたせいか、本屋でもビジネス本の売れ筋の棚に並べられていました。
スラスラと読み終えたのですが、感想は・・・「読んでも読まなくてもいい本」でした。
タイトルで書いてますな。
ふざけながらも、チョイチョイ真面目な話を織り込むスタイルで「書く」ということについて述べています。
ただ、それがなんとも中途半端。
たとえば、書くのにテクニックは必要ないと主張しているところ。
「わたしは、わずか100冊程度だがダイエット本を読んで確信した。テクニックは、役に立たない。全く痩せる気配がない」
こんな感じで綴られていきます。
ユーモアエッセイを書き続ける土屋賢二そっくりですね。
土屋賢二はこの文体がひたすらひたすら何十冊も続くのですが、この本はふざけたかと思えば急にマジメになる。
モヤモヤ感が否めません。
むしろ、マジメな部分は役に立つかもしれません。
本人も著書の中で書いていますが、コラムの「広告の書き方」と「書くために読むといい本」
は読むに値するでしょう。
「読むといい本」で取り上げられているのもマジメで、マルクスの資本論やダンテの神曲、あとは司馬遼太郎や塩野七生ら。
教科書的で納得はできます。
「書く」ことについてもシンプルです。
とにかく「調べて、書く」が大事だと説きます。
そのために一次資料に当たることや、調べる方法なども載せています。
書く方法も「起承転結でいい」と基本に忠実。
オーソドックスな方法論ですね。
で、この本の結論をひとことで言えば「書けばいいことがある・・・かもしれない」。
文章なんてだいたいみんな読まないし、自分が好きなことを書けばいいんですよ。
このブログも、登録読者の半分も読んでくれてないしね!
もっと読んでね!
というわけで、評価は星2つ半。
読みたい人は読めばいいかと思います。
このブログは読んでね。