「ポツンと一軒家」が好調な理由とは?
テレビ朝日の番組「ポツンと一軒家」が好調のようです。
9月29日の放送が視聴率20.8%を記録するなど20%台を連発。
勢いは続いています。
ぼくも何度か見たことがあるのですが、なかなか面白いですね。
人里から遠く離れた場所にポツンと一軒建っている家を訪れ、その人たちの暮らしを紹介する番組。
いまの日本にもこんな暮らしをしている人たちがいるんだなあ、と驚きと感慨を与えてくれます。
現代ビジネスも何度かこの番組を取り上げています。
番組に感化されたのか、実際に取材にも行っているようです。
人気の理由はいろいろあるでしょう。
現代ビジネスでは、未来に明るい材料が乏しいなかで、「清く正しく美しく勤勉な人」たちが次々と登場する部分もあるのでは・・・なんて分析もしています。
ぼくは、視聴者層にも理由があるのではと思っています。
テレビって、すでに中高年世代に特化したメディアですからね。
若い世代の多くはネットのYouTubeやAbemaTVを見ていて、テレビは持っていない人も多い。
だから、番組のターゲットは中高年世代になります。
その世代の最も大きな関心は何か。
ずばり、老後です。
田舎の山奥に住んでいる人たちもほとんどが高齢者ですよね。
20代、30代が目指すのは都会であって、人里はなれた山の中ではありません。
そして、番組で紹介されているのは、老後の人生を過ごしている先輩たちの生々しい姿なのです。
定年間近のくたびれたサラリーマンたちは、通勤電車の中で毎日想像しています。
「ああ、こんな疲れ果てた生活はもうたくさんだ。イヤな上司や人間関係から離れて、どっか大自然の田舎でのんびり過ごしたいなあ」
その実例となる生活を送っている人たちが、画面の向こうにいます。
放送時間帯も絶妙です。
気が重い月曜日が始まる前の、日曜日の夜。
長い長い一週間の前夜に、人間関係のストレスとは皆無の人たちの様子を流すのです。
そりゃ、みんな見ますよ。
老後の生活で多くのひとたちが心配するのは、孤独との闘いです。
歳をとると友だちってなかなかできないし、人付き合いが面倒になったりもします。
そのうえ、孤独死のニュースは後を絶たない。
ひとりぼっちになってしまったら、どうしよう。
一週間、誰とも話さない日々ってどんな感じなんだろう。
会社員生活も終わりが見えてきた人たちには、こんな漠然とした不安が心の中にやどっているのではないでしょうか。
そこに、ポツンと一軒家で暮らす高齢者の生活が放映されるのです。
出てくる人たちは、孤独や不便さとうまく付き合いながら、ちゃんと生きている。
たいしてお金を持っているわけではないけれど、生き生きと暮らしている。
ぼくらのような疲れ切ったサラリーマンにとっては、ちょっとした希望の光を見ているような気がするんですね。
たぶん。
ぼくは寂しがりなので、頑張って友だち付き合いはしていきたいし、いまのところ刺激のある都会での生活を捨てるつもりはありません。
でも、数日くらいはポツンと離れた一軒家で過ごしてみるのもいいかも。
仕事のことも、人間関係も忘れて、何も考えないで、ただぼーっと過ごす。
哲学者になれますね。
そういえば、出てくる人たちはどこか哲学的。
周囲に同調せず、人と違った暮らしをすることにためらいのない、いい顔をしています。
セミリタイアをめざす人たちにとっても、お手本になるのかもしれません。