そば屋で味わったデジャブ感の話
知りあいと食事に出かけたときのこと。
知人は小さな子ども連れだったので、駅近くのそば屋で食べることにしました。
まだ夕方の早い時間だったので、店はガラガラ。
大人4人と小さな子ども1人で、4人がけのテーブルにつきました。
ビールを飲みながら、酒のつまみや天ぷら、アジフライなどを注文すると、テーブルはあっという間にいっぱいになります。
そこで、誰もいない、となりの小さなテーブルをくっつけて使っていいかと知人が店員に聞きました。
中年のおばさん店員は、一言で即座に答えました。
「ダメ!」
ぼくの心にわいたのは、怒りやあきれの気持ちよりも、デジャブ感です。
これと同じ光景をどこかで見たなあという思い。
そうそう。
近所のベトナム料理店に入ったときに、まったく同じ待遇を受けたのでした。
店内はガラガラなのに、狭くて窮屈なテーブルに案内されたんです。
「人は目の前に利益を得る機会があるとき、利益が確実に手に入る方を選ぶ」という、プロスペクト理論が実践された、あのときのことです。
そば屋でもまったく同じことをされました。
つまり、この中年のおばさんはこう考えたんですよ。
このあとお客さんが入ってきて店がいっぱいになったときに席が埋まっていたら、せっかく来てくれた新規の客を断らないといけない。
それは損だ。
この子連れの4人組に親切にしたとしても、将来また来てくれるかどうかなんて分からないし、それがいつになるかもわからない。
そば屋だから、小さい子どもをまた連れてくることは滅多にないだろう。
そんな不確実なことに賭けるよりも、きょうお客が来たときに備えて席を空けておく方が得だ。
ぼくらを窮屈で不快な気持ちにさせることと引き換えに、あとからお客さんが入ってきたときに店が利益をあげることを選んだんですね、このおばさん店員。
実はこれと同じことが起きているという記事を最近ネットで読んだことがあります。
「◯◯フェア」などのイベントに出している店では食べてはいけないという話。
そういうイベントの客はほとんどが一見さんで、リピーターはいない。
だから、店側はその場で儲けることだけを考えて、質の低い商品を出しているということです。
なるほど~。
たしかに祭りの屋台などもそうですよね。
たいして美味しくなくても問題ないから、高くてまずい食べ物を平気で売っています。
まあ、客の方も雰囲気さえ味わえればいいので、お互い納得しているのでしょう。
商売って難しいものですね。
ちなみに先日、あのベトナム料理店の前を通ったら、すでにつぶれていました。
まあ、そうだろうな。
あのそば屋はどうなるのでしょうね。
ぼくは2度と行かないけど。