ラグビーW杯が盛り上がっていて、うれしい
駅の近くで信号待ちをしていると、親子の会話が聞こえてきました。
父親が小学生くらいの息子相手に、ぼやいています。
「ラグビーを見たいのに、ママがドラマを見ちゃうんだよなあ」
息子はバイエルン・ミュンヘンのTシャツを着ていて、日焼けしています。
いかにも活発なサッカー少年が、父親に同調します。
「ドラマなんか、あとで見ればいいのにね」
ガッチリとした体格の父親は、きっとラグビー選手だったのでしょう。
筋肉質でずんぐりむっくりしているので、フォワードだったのかもしれません。
「そうだよなあ」と言いながら、おそらく家に帰ったら奥さんに言い出せずにチャンネル争いで不戦敗するんでしょうね。
ラガーマンって、そんな心優しいイメージがあります。
ラグビーのワールドカップ(W杯)が始まり、日本が初戦でロシアに勝ったこともあって、盛り上がってきましたね。
ドラマの「ノーサイド・ゲーム」も視聴率が好調だったようです。
ぼくはラグビーがずっと好きで、学生時代まではよくテレビで見ていました。
当時はラグビーって人気スポーツだったんですよ。
高校ラグビーもテレビで中継されていて、秋田工業や天理、大分舞鶴などの強豪の試合を楽しみにしていました。
大学では「タテの明治、ヨコの早稲田」の対決が国民の注目を浴びていましたね。
社会人では新日鉄釜石や神戸製鋼が強く、平尾誠二や松尾雄治らは国民的なスターで、彼らの華麗なステップは子どもたちを魅了していました。
ラグビー人気の潮目が変わったのは、W杯が始まってから。
サッカーのW杯は歴史が長いけれど、ラグビーの第1回W杯は1987年に初めて開催されました。
そこで、化けの皮がはがれてしまった。
日本は世界を相手にまったく歯が立たないことが明らかになってしまったのです。
2011年の第7回大会まで、日本代表のW杯での通算成績はなんと1勝21敗2分け。
その1勝も相手はジンバブエでした。
1995年大会ではニュージーランドに17-145と記録的な大敗を喫して、日本のラグビーのレベルの低さが白日の下にさらされたのです。
日本中が熱狂していたラグビーって、井の中の蛙だったことがバレてしまったんですね。
明治のタテも、松尾のステップも、しょせん日本レベルでの話で世界では全然通用しないことが知れ渡っちゃった。
それで、一気に人気が下降してしまいました。
だって世界に出たら24回に1回しか勝てないチームなんて応援したくないですもんね。
奈落の底まで落ちそうだったラグビー人気を辛うじて持ち直してくれたのが、エディー・ジョーンズでした。
このラグビー界の名将が日本代表の監督に就任し、前回W杯で南アフリカを撃破する奇跡を見せたのです。
ぼくはその試合を見ていなくて、ニュースで知ったのですが、「そんなこと、あり得るの?」と信じられませんでした。
ラグビーって、じわじわと体力を削られる競技なので、番狂わせが起きにくいスポーツなんですよ。
序盤は弱いチームが戦術を駆使して動き回り、リードを奪ったとしても、体力が落ちた後半に強い方が地力を発揮して逆転することが多い。
だから、あの南アフリカ戦は「W杯史上最大の番狂わせ」と言われているのですね。
前回大会で日本代表が善戦したおかげで、今回の自国開催も盛り上がっています。
よかった。
これをきっかけにラグビーの良さがもっと多くの人に広がるといいなと思いますね。
試合を見たらわかるけど、選手たちは絶対に審判に抗議しないんですよ。
ぶつかり合って興奮している大男たちが、審判の判定には文句も言わずに従う。
一斉に審判に詰め寄るサッカーにはない、潔さがあって気持ちがいいです。
それにラグビーって、1人だけの力では勝てないスポーツです。
だから、特定のヒーローは生まれにくいし、1人だけが目立つことを良しとしない雰囲気があります。
特にフォワードの連中は黙々と泥臭い仕事をして、縁の下の力持ちであることを誇りに思っている。
いいですよね~。
まさに男のスポーツです。
ラグビーに関心がないひとも、せっかくの機会なので、見てみてはいかがでしょう。
ルールがくわしくわからなくても、雰囲気だけでも楽しめると思いますよ。
ぼくは、どこに転がっていくのか分からない楕円形のボールの行方を見るのも好きですね。
まるで自分の人生を見ているみたいで。