お年寄りが達観しているなんて、大ウソ
会社のアルバイトの女の子と雑談していたとき、彼女がふと漏らしました。
「わたし、終身保険に入ろうと思ってるんですよね〜」
なに!?
今どきの大学生はそんなことを考えているのか。
年金に関心がある若者は多いと聞いたことはあるけど、そのさらに一歩先を進んでいるとは。
ぼくが20歳くらいのときは、将来のことなんか何一つ考えていなかったなあ。
そんな感慨にふけりながら、理由を尋ねてみました。
「まだ大学生なんでしょ? みんなそんな先のことを考えてるの?」
すると、こんな答えが返ってきました。
「だって、うちは長生きの家系なんですよ」
女の子は世にも恐ろしい、家の事情を語り始めました。
彼女の「ひいおばあちゃん」は2人とも存命していて、そのうちの1人はすでに99歳に達しているとのこと。
そのひいおばあちゃんに、ガンが見つかった。
この人は頑固でワガママな性格で、周りの人たちはいつも扱いに困っていたので、「これでようやくホスピスに入れることができる」と安堵したそうなんです。
ところが。
このひいおばあちゃん、「手術をする」と言って聞かない。
周囲が何を言っても譲らず、強引に手術をしてしまった。
すると。
「すごく元気になってしまったんですよ。これから後、いつまでも生きていそうなんです」
ひえ〜
そりゃ、この女の子が自身の長生きを心配するのもわかります。
ぼくの知り合いにも同じように頑固なお年寄りがいるのですが、そのおばあちゃんもすごく似ています。
もう90歳近いのに、自分が長生きすることに執念を燃やしているのです。
毎日のように病院に通い、少しでも具合が悪いと感じたらあらゆる検査をします。
その結果に納得しなければ、ほかの病院にも当たる。
長生きのために長生きしているとしか思えないし、実際そうなんです。
いや、やりたいことがあるのなら分かりますよ。
生きている間に富士山に登りたいとか、まだ書き残した小説があるとか。
子どものころは貧乏だったからまだまだ美味しいものを食べていたい、でもいいです。
でも、そんなことはないんですよ。
一日中、ただテレビを眺めているだけ。
何をすることもなく、ぼうっと過ごしているだけなのに、長生きだけはしたいんですね。
これ、すごく困るんですよ。
そうしたお年寄りが病院を占拠して、ほんとうに治療が必要な人たちが後回しにされます。
知人もおばあちゃんに対して「日ごろ会社に通っている人たちが診察を受けられるように、土日に病院に行くのはやめなさい」と言うのに、まったく聞く耳を持ちません。
自分が第一、ほかの人の迷惑なんて頭の片隅にもないのです。
おばあちゃんはこんな言い訳もするそうです。
「病院に行ったって、大してお金かかんないからいいじゃない」
何を言ってる。
こうした高齢者たちのために我々の税金や介護保険料がガンガン使われています。
一方で、これから社会を背負っていく若者たちは高い学費や学生ローンに苦しんでいる。
どう考えても逆ですよね。
年をとったら達観して「もう充分に生きた。あとは子どもや孫たちの世代のために、いい世の中にしてもらいたい」と仙人のような気持ちになると思ったら、大間違いです。
たいていはワガママになり、自分のことしか考えなくなります。
周りに気をつかいすぎるぼくも、早くその境地に達しないと。
年寄りになるのが楽しみだ。