若者の所得税を免除した国がある
ぼくが働く会社は旧来型の日本企業で、先行きは明るくありません。
年々、新卒の採用が減ってきて、職場はおじさんが多い。
平均年齢もどんどん上がっています。
以前は若手がやっていた業務を、中堅やベテラン社員が担うことも増えてきました。
「この道、何十年とやってきた俺が、なんでこんな仕事をやんなきゃいけないんだ」と思いながら働いている中高年社員たちも多いと思います。
飲みに行っても「昔はなんでも経費で落ちて、羽振りが良かったのになあ。タクシーもバンバン使えたし」なんて話が始まっちゃう。
「三丁目の夕日」を見て懐かしむ世界。
やだやだ。
未来よりも過去の話で盛り上がる、沈み行く日本の象徴のような会社ですな。
ともかく、若い社員は会社にとって貴重な存在です。
ぼくたちおじさんよりも、ずっと。
給料が高い割に仕事をしない中高年は、どんどん辞めてもらって結構。
むしろ早期退職を募って数を減らしたい。
だけど、若手に辞めてもらっちゃ困る。
会社が彼ら若手社員を大切にしているのが分かります。
管理職を対象にした研修でも、若い人たちに対する接し方をみっちり教え込まれます。
昔だったら「困難から逃げるんじゃないぞ!」「何やってんだ、やり直しだ!」などと怒鳴っていたのが、いまはご機嫌を取り、いいところを褒めながら懇切丁寧に説明しないといけません。
人前で叱ってもいけない。
「まあ、気を取り直そう。一杯飲みに行こうや」と誘うのもダメ。
すると、腫れ物にさわるような扱いをするようになってしまうんですね。
人手が減って仕事は増えているのに、1人の若手の教育にそこまで気をつかって時間と労力をかけようとする管理職はなかなかいません。
次の異動までなんとか辞めないでもらえれば、それで良しと考えちゃうんですね。
その結果、どんなことが起きているのか。
新卒の社員がちゃんと仕事の基本を身につけないまま、次の職場に移っていくんですよ。
で、異動先の上司から「おまえらは何を教えてきたんだ!」と前の職場にクレームがつくという。
そんなたらい回しが問題になっています。
実際、ぼくの職場にも問題児がいるし。
頑張りましょう、中間管理職!
問題を抱えているとはいえ、若い世代が将来を担う存在であることは間違いありません。
彼らがいないと社会は成り立たない。
会社だけでなく、各自治体もあの手この手で若者の流出を防ごうとしています。
家賃を補助したり、就職を支援したり。
日本だけではありません。
ポーランドは若い世代を引き留めようと思い切った策に出ました。
モラウィエツキ首相は法案の審議に際して議会で行った演説の中で、過去15年で170万人がポーランドを去ったと述べ、「これはワルシャワの全人口に相当する。とてつもない損失だ」と嘆き、「これは終わらせなければならない。若者はポーランドにとどまるべきだ」と訴えていた。
それにしても、所得税免除とは。
それだけ危機感が強いのでしょう。
日本も今後、経済が沈んで行けば、若者たちがどんどん海外へ流出する可能性があります。
日本にいても希望がなければ、そうなりますよね。
そのときは、ちゃんと彼らにアメを用意して引き留めないといけません。
みなさん、決して「逃げるんじゃないぞ!」となどと怒鳴ったりしないようにね。