決してメールを返してこない部下
ぼくは中間管理職だ。
部下の一人に、20代の女性がいる。
仕事で数十人とやり取りするなかで、ただ一人、決してメールに返信しない女だ。
彼女が海外に出張したときも、一向に連絡をして来なかった。
現地に着いたかどうかもわからない。
予定より半日以上たっているのに。
そんなことを同僚と話していると、「どうやら着いているみたいですよ」と声があがった。
到着したことを知ったのは、彼女のツイッターからだった。
うれしそうに現地の様子をつぶやいていたのだ。
まだこの部署に来て日が浅いので、ほかの部員と組ませて仕事をさせることも多いのだが、どうやら協調性がないらしい。
周りの連中も、おせっかい役の一人を除くとあまり関わらないようにしているみたいだ。
お酒のくだけた席で、ちょっとふざけたひと言を投げかけた上司に対して真顔で反論した彼女を見て、ぼくもできれば深く関わりたくないなと思った。
本人のためを思って忠告したとしても、相手がどう受け取るのかはわからない。
パワハラだ、セクハラだと騒がれたらたまらない。
いまは何かと問題になるからね。
所属長は「あいつはゆとり世代だからな」と苦笑いするだけだ。
いまは年上の部下も珍しくなくなった。
むしろこちらの方が扱いにくい。
新しいものに対する拒否反応を露骨に示す人もいる。
かつて中間管理職だった時代にグループを崩壊させた人がいて、この人の取り扱いにはみんなが苦慮している。
昔からいろいろ問題を抱えた人はたくさんいたのだと思う。
ぼくも若いころはとんがっていたから、問題児の一人として扱われていたのかもしれない。
きっとそうだ。
ただ、以前は人員がたくさんいた。
使えない人がいても、代わりにやらせればよかった。
いまは違う。
人がどんどん減り、給料も減り、業務だけが増えていく。
「使えない」と見られている人でも、頭数として使っていかないと業務が回らないのだ。
以前なら部下を育てることが管理職の仕事で、やりがいでもあったのだと思う。
でも、今は年上の部下をいかに扱うかが主な業務で、やりがいもへったくれもない。
若い部下は下手に注意すると辞められるので、みんな腫物を触るような扱いだ。
もう、管理職にやりがいなんてない時代なのだろう。
さっさとリタイアするに限りますね。
で、冒頭の女性に戻る。
メールで仕事の依頼をしたとき、「メールを受け取ったら返信を」と試しに書いてみた。
あれから4日が過ぎた。
返信は、まだこない。