ただのおじさんにふさわしい場所
電車で移動するとき、ぼくはもっぱら先頭車両に乗ります。
比較的空いているというのが一番大きな理由ですが、運転席からの風景をボーっと眺めるのが好きだというのもあります。
おじさんは疲れてますからね。
頭を休めて、ただ、流れていく風景をみる。
おれはこの先、どこに向かっていくのだろう。
答えのない問いを自分に語りかけてみる。
コンクリートジャングルで闘うおじさんには、そんな時間が必要なんですよ。
自分の先行きは不透明でも、電車の行き先は決まってるんですけどね。
運転席のうしろは「特等席」なので、人気です。
たまに小さな男の子が「見たい」と駆け寄ってくることもあって、そんなときはそっと譲ってあげます。
電車の運転手は子どもの夢ですからね。
子持ちの友人たちのフェイスブックにも最近、立て続けにプラレールの写真がアップされました。
この前まで赤ちゃんだったのが、もう電車に興味をもつ年ごろになったんだなあと感慨深くなります。
子どもたちが電車に憧れるのは理解できます。
でも、自分が鉄ちゃんになれないのは、やっぱり電車には自由がないから。
自由をこよなく愛する風来坊のぼくには、あらかじめ行き先が決まっている乗り物は合わないんだな。
なんてね。
そんなわけで、どちらかといえば電車の運転手よりもパイロットの方が好きですね。
中学生のころだったか、ゲームのフライトシュミレーターが出たときは衝撃でした。
電車の運転席はいつでも見られるけれど、飛行機の操縦法は完全に未知の世界だったから。
コックピットの中ではこうやって飛行機を操縦するのか。
まるで本物のパイロットになったみたいで、一時期夢中になりました。
そのフライトシュミレーターを部屋の中に設置したホテルが日本にあるようです。
羽田空港近くの羽田エクセルホテル東急が、客室内にフライトシュミレーターを設置。操縦を体験して羽田空港から伊丹空港までの景色を楽しめるとのこと。
ボーイング737-800型機を模したフライトシミュレーターを設置した客室「スーペリアコックピットルーム」を開設いたしました。実際に飛行経験のある元機長をはじめ、機器に精通したインストラクターの指導のもと、飛行機の操縦体験ができます。
いやあ、夢がありますね。
やっぱり男は地面を這うように動く電車の運転手なんかより、大空を飛んでいくパイロットを目指したいよね!
世界の関心も高いのでしょう、CNNも紹介していますよ。
どれどれ、申し込んでみようかな。
90分、3万円(消費税別)・・・。
実際に羽田から伊丹まで行く航空券より高いじゃないか・・・。
おじさんは現実に引き戻されました。
夢には、お金がかかる。
電車の運転席のうしろで物思いにふけってるくらいが、おれには合ってるぜ!